「契約書レビューして。時間ないから、なる早ね」と上司に指示されたので、せっせと契約書をレビューする。「この契約書、取引の実態と合ってんのか?」なんてブツブツ言いながら、20ページ近くあるボリュームの契約書を直していく。3日かかった。最後までレビューして、何度か見直して、「じゃ、明日の朝イチで営業に提出してこの仕事終わりにしよう!」とパソコンの電源を落としたところで、「この契約書、よくわかんないところあるよね?営業とmtgしたら取引精査するって言ってたから、やっぱりレビューいいや!」と明るい声で上司から言われる。今さらそれ言う?
昨日、友人3人と新橋で飲みながら愚痴ってみたら、「俺も徹夜で作った企画書を、『やっぱり違う企画を立てて〜』と読まれもせずにボツにされたよ」なんて話を友人Aに聞かされました。マジで「やめてやろうと思ってるわ〜」と友人Aは最後に言いましたが、僕も3日かけてやった仕事を、「やっぱやめ」なんて言われた後、頭の中をドス黒い気持ちが駆け回り、「やめてやろうかな・・・」とリクルートエージェントに登録したりもしました。やりきれませんよ。
けど、「会社員だったら当たり前じゃん!そんなの気にしてたらどこの会社行ってもやってけねーよ」と、また別の友人Bが言うわけですよ。ちなみに、その友人Bは大きな会社で総務課長をやっている出世頭です。あっち側に行きやがったか・・・なんて思いますけど、彼にうまく反論もできません。
そして、「俺だってさ〜、課長になってから会社の力関係とか考えるようになって、どうしても指示を変えなきゃいけないことは出てくるんだよな〜」と、いかに友人Bが課長として苦労しているか?という愚痴に擬態した自慢話になり、僕も友人Aもうんざりしながら、飲み会はお開きとなりました。
正直、後味の悪い飲み会になってしまったのですが、その理由は、僕も友人Aも、友人Bに反論できなかったからと思います。そこで優劣関係ができてしまい、友人B>>>僕、友人Aという構造になって、優位に立つ友人Bの話を聞くという、上司とのつまらない飲み会のような構造になってしまったのではないかと思うのです。
そして、その原因は、彼に反論できなかったから。モヤッとした気持ちを抱えながら、その気持ちを言葉にできなかったからです。
もし、友人Bが「そんなの当たり前だろ!」と言ったときに、僕が納得せざるを得ない反論をしていたら?少なくとも、友人Bの自慢話には話は進まなかったでしょう。僕も、友人Aも、うんざりした気持ちで帰らなくてもよかったかもしれません。
でも、ここまで考えながら、「僕は口がうまくないからな・・・」と思い返します。そんな納豆せざるを得ない反論なんて、できるわけがない。
そんな気持ちを抱えながら手にしたのが、『こうやって頭の中を言語化する。』でした。全体的に面白いんですけど、特に気になったのが、34ページ。
トップコピーライターは、こうやって言葉をつくる
言語化力のベースは「聞く力」にある。
筆者の荒木俊哉氏は、いくつも広告賞を受賞したことのある電通のコピーライターですが、彼は、「コピーをつくる時間の『約9割』を、ある工程に使っています。それが「聞く」工程です。」といい、さらに、その「聞く」は、「①クライアントや生活者の話を聞く ②自分自身の話を聞く」といいます。そうやって、他人の頭の中も、自分の頭の中も、グシャグシャッとしている気持ちを、腑に落ちる明確な言葉に変える。それがコピーライターとしての仕事であるというわけです。
そうか・・・と、腑に落ちました。僕が友人Bに反論できなかったのは、僕が上司に抱えていた不満を、言語化できていなかったからでした。だから、友人Bに正論っぽい反論をされたときに、反論できなかったのです。正論って、反論を許さない雰囲気がありますよね。あれ、嫌いなんです。
僕は、上司の何に腹を立てていたのか?仕事がやり直しになったことなのか?いえ、そうではありませんでした。
上司の、思慮の浅さです。
上司は、営業から契約書のレビューを依頼されたときに、パッと見て「おや?」と違和感は持っていたかもしれません。しかし、右から左に流すように僕に指示を出したのでしょう。けど、時間が経ち、その違和感は大きくなった。そして、その違和感がだんだんと明確になり、「これはダメだわ」と思い直して、指示を変更した。だいたいこんな筋書きじゃないかなと思います。
最初から少しでも考えていれば、指示を変更しなくて済んだんじゃないか・・・?と思い、僕はイラッとしたわけです。そして、ただイラッとしたわけじゃなくて、これは僕の中での上司としての理想像につながっていきます。目の前の仕事に飛びつくような爬虫類脳の上司ではなく、多面的に考える思慮深い上司です。だから、最初から、上司に「なる早ね」と指示されても、飛びついて契約書をレビューするのではなくて、問題点を考えて上司に簡単にでも指摘するべきだったんですよね。「この契約書、取引実態と合ってないみたいですけど、このまま進めるんですか?」って。
もし、僕の気持ちを最初から言葉にできていたら、無駄な仕事をしなくて済み、上司からの評価も高まったかもしれないし、友人A・Bとの飲み会の結末も変わっていたかもしれません。
言語化っていうのは、最強のスキルなんだなと思うわけです。
決して、口のうまい人が成功するわけじゃない。言語化する人が成功する。そう思い、僕はこの本を読みました。興味があれば、あなたもどうぞ。

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